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バイオテック

ベートーベン鉛中毒説の根拠となっていた遺髪、女性の髪の毛だった

タレコミ by headless
headless 曰く、
英ケンブリッジ大学やドイツ・テュービンゲン大学などの研究グループがベートーベンの遺髪に対する全ゲノムシーケンシングを実行し、彼の作曲家・演奏家としての活動に大きな影響を与えた健康問題について遺伝性・感染性の原因を分析している (論文Ars Technica の記事)。

音楽史上最も重要な作曲家の一人であるベートーベンは進行性の難聴や慢性の胃腸炎に苦しみ、最後は肝硬変で亡くなった。死の翌日 1827 年 3 月 27 日に発見された 2 人の弟あての手紙 (ハイリゲンシュタットの遺書) では病状を記録して公表するよう要望しており、指名された医師はベートーベンよりも 18 年早く亡くなっていたが、病因を調べる研究は長年にわたり行われている。

今回の研究ではベートーベンのものとされる 8 つの毛束から採取した毛髪のサンプルを調査。まず 8 サンプルに対し浅いショットガンシーケンシングを実行した結果、5 サンプルが欧州系男性の同一人物 (または一卵性双生児) のものであることが確認された。研究グループではこれら 5 サンプルを本物と仮定し、最も状態の良いサンプルで全ゲノムシーケンシングを実施している。

難聴や胃腸の問題について遺伝学的説明はできなかったものの、少なくとも死の数か月前には B 型肝炎ウイルスに感染していたことが判明した。これは記録されているベートーベンの酒量と合わせ、深刻な肝臓病になったことの説明になるという。また、現代に生きるベートーベンの甥の子孫のゲノムシーケンシングも実施しており、Y 染色体の分析結果からベートーベンの直接の父系で夫妻とは別の父親が存在したことが判明している。

あとの 3 サンプルのうち 2 サンプルは一致した 5 サンプルに近い DNA 損傷レベルだったが、1 つは女性のものだったという。もう 1 つは欧州男性のものだが 2012 年以前の来歴が不明なため本物ではないと結論付けられ、最後の 1 つはDNA保存状態が悪く評価対象外となった。

なお、女性の髪の毛であることが判明した毛束のサンプルたびたび研究対象となっている。過去の研究では高濃度の鉛が検出されており、ベートーベンが鉛の溶け込んだ甘いワインを好んだことで鉛中毒になり、難聴の原因になったという説の根拠となっていた。また、梅毒治療に用いられた水銀が検出されなかったことから、梅毒が難聴の原因となったという説を否定する根拠にもなったほか、死の直前に苦しみを和らげるためにアヘン剤が処方されたという説を否定する根拠にもなっていた。毛束を巡る物語映像化もされているが、ベートーベンとは無関係だったことになる。
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